6月4日 馬と働く代掻きの会を終えて

さんさんと降り注ぐ太陽の下、聞こえるのは鳥のさえずり、木々のさざめき、水路を流れる水の音、そして水を張った田の中で泥を蹴る馬と人の息遣い。五感を開いて馬のリズムとシンクロしたら、田んぼを耕す仕事はとても心地よく愉しく感じました。大人も子供も男性も女性も関係なく、耕したことがある人もない人も関係なく、皆がお米作りの一端に関わることができました。

今回、縁あって長野県伊那市高遠、ぴたらから甲斐駒ヶ岳をはさんで向こう側に住む「うまや七福」横山晴樹さんと愛馬ビンゴをお呼びして、水を張ったぴたらファームの田んぼで田植え前の代掻き体験会を開くことができました。

横山さんは馬とともに田畑を耕し、薪を運び、自給自足的な暮らしを営みながら、馬耕の普及活動や馬と遊べる地域のこどもの遊び場づくりをされています。横山さんは世界中を旅するなかで馬と暮らす人々と出会い、消えゆく日本の馬との暮らしを取り戻すため、3年間かけて岩手の師匠の下へ通い馬搬・馬耕の技術を修得されました。現在の馬との暮らしも日々鍛錬の積み重ねであり、馬と主人が二人三脚で成長していけることで歓び・達成感を味わえるのだそうです。

田植えの準備の段階で、何回か田んぼを耕す作業がありますが、今回は田植えの直前に水を張った田んぼを耕す「植え代掻き」を体験させていただきました。田んぼの大きさは4畝。参加者は大人子ども合わせて合計30人ほどになりましたが、みな十分に体験ができ、のんびりと楽しむことができました。

手綱を曳く横山さんとビンゴくん

まずは、馬力のありがたさを体感すべく、人力代掻きに挑戦!

写真は男女ですが、屈強な男2人で頑張っても1分間に10mくらいしか進みませんでした。。全部終えるのに1週間くらいかかりそう笑

そこで、ビンゴくんの登場です!

力づよく泥を蹴り、人力の20倍くらいの速さですいすいと進んでいきました。

今日の仕事の第一段階は、横山さんが持ってきてくださった馬鍬(まんが)を使い、荒く代掻きです。馬鍬とは、細い歯が並んだ木製の農具で、今では作られていないため、骨董屋さんや古い古民家からの掘り出し物でしか手に入らない代物。じつはぴたらでもちょうど先月、古いお蔵を片付けるという知り合いの方から、古い馬鍬を譲っていただく機会がありました。

状態がとてもよかったのですが、これが本当に使えるのだろうか…と半信半疑。しかし横山さんと一緒によく見てみると、職人の技を感じるとてもしっかりした造りで、実際に使わせていただくこともできました。使う人がいなければ骨董品でしかない馬鍬が、息を吹き返して実用される様子には、なんともいえぬロマンと感動があります。

皆でかわりばんこで体験。馬との田仕事の風景は美しいものですね。
子供も手綱を曳かせてもらい、馬との協働を体験しました。

馬鍬で耕して泥をゆるくした後は、刃のついた車輪を転がして耕す道具を使いました。これは馬鍬の後の年代に登場した進化版だそうで、トラクターの前身となる道具のようです。車輪で泥の塊を砕き、凸凹を平面にしていきます。

美しい稜線をバックに。
子供たちも自由に田んぼに入って、間近で馬と触れ合いました。
みんな積極的!

一通り耕した後は、なんとスノーチューブが登場!

道具の後ろにスノーチューブを装着し、人が乗れるように…!

こちらは子供に大人気で、みんな乗りたい!乗りたい!と大はしゃぎでした。遊びに見えますが、そこはさすがプロ。スノーチューブの後ろには太い木の棒がついていて、棒の重みで土の表面が滑らかな平面にされていきます。そう、馬力ハロー耕です!(専門用語ですみません。。)この工程によって、稲の苗が植えやすくなります。

遊びと実益を兼ねた素晴らしいアイデア。

最後は横山さん自らチューブにまたがり、手綱でビンゴくんを巧みに操りながら全体の仕上げをしてくださいました。

とてものどかで、見とれてしまいました。

仕上げが完了した後は、どろどろになったビンゴくんを洗ってあげたり、馬具を丁寧に洗い片付け。その後夜19時から夕食を兼ねた懇親会を開き、横山家の暮らしの様子やインタビューを記録した映像や横山さんが旅先で出会った世界の馬の写真を見せていただきながら、皆で和気あいあいと杯を交わし合いました。馬耕に興味のある方々の意見交換や情報交換の場となり、とても良い会となりました。

今回イベントの参加者を集めるにあたり、チラシを市内の店舗さんや施設に置かせていただきました。また、インスタグラムとフェイスブックを利用して募集も行いました。参加者は北杜市内を中心に山梨県内にお住いの移住者の方が多く来てくださり、今回のイベントの開催資金も無事に集めることができました。皆さんのご協力に感謝いたします。今後も横山さんとタイアップして、馬耕や馬搬のイベントができたらと思っています!

イベントチラシ

昔ながらの馬との暮らしに興味のある方、まずは横山さんのfacebookページで、ご自身で編集しアップされている映像を見てみてください。→横山 晴樹 | Facebook 本気で馬耕を体験してみたい方は、横山さんのご自宅を訪れてみてもいいかもしれませんね。